向日葵

どうして、こうも違うものか……?

彼女を見るたびにいつも僕は思う。

そもそも彼女はなぜ僕の彼女なのだろうか?


いつも笑う彼女。それはそれは楽しそうに。

いつも、下を向いている僕。別に悲しいことがあるわけじゃない。

でも上を向く勇気がないのだ。


だから、だからそれを変えたくて、勇気を出した。


予想外の結果と変わらない僕が残った。

それでも、彼女も変わらなかった。


そんなことなど気にしない風で今日も彼女は僕の隣で笑っていた。


辛いことがあるかもしれない。悲しいことがあるかもしれない。


でも、こんな僕には話してくれないだろうな。

そんなことを小さく思った。


向日葵畑を歩いていた。

夏は……終わっていた。


”彼ら”は夏のそれが嘘のように頭を垂れ存在感を小さくしていた。


強いものはそれと同等に弱い。


そうなのかもしれなかった。

彼女もそうなのかもしれない。


僕は……?


わからなかった。



彼女も向日葵畑を見ていた。

でも何も言わなかった。


僕も、何も言わなかった。


下を向く。

「夢ってある?」

彼女は唐突に聞いた。


夢は……ひとつだけ、あった。

いやできたと言うべきだろう。


でも、何も言わなかった。

ひとつ

「君は?」

そう言った。

一瞬だけ、同じ夢ならいいなと思った。

でも、すぐにかき消した。



「太陽になりたい」



眩しいくらいにうれしそうな声で彼女は言った。


「へ?」


あまりに予想外な回答に僕は思わず顔を上げて彼女を見た。

彼女はいつしか空を見ていた。

僕なんかよりずっと遠い空。

僕なんかよりずっと広い空。

その先に彼女は行こうとしていた。


ああ、そうか、と直感的に思った。

それはそのとおりで、彼女はここにいるより、そこにいるほうがよっぽど似合うのだった。


だから、


「君ならなれるよ」


そう言って、僕はまた、下を向いた。


彼女は何も言わなかった。

あるいは聞こえていないのかもしれなかった。


それでもいいと思った。


でも、


「一緒になろうよ」


小さく、彼女の言葉とは思えないほど落ち着いたトーンで僕にそれが届いた。


目が一瞬見開いたのがわかった。

でも、上は向かなかった。


「む、無理だよ」


たぶん上手く笑えていたと思う。


でも、本当はきっと泣きたかった。




「ねぇ、空見てみなよ。すッごく綺麗」


彼女はさっきの言葉がなかったかのように明るいトーンで話を切り替えるのだった。


でも、でもなぜか……彼女は空ではなく、僕を見ていた。


僕は顔を上げられない。


今空なんて見たら、今彼女を見たら……


「青空は嫌いなんだ」


小さな嘘をついた。


「え!?そうなの?」


彼女は心底驚いたように言った。


「ごめんなさい。知らなくて、でも、その君はきっと青空が好きかと思ってて」


バレてた。

でも、何も言わずに首を横にふった。


「……じゃあ、これからは雨の日に会お」


彼女はまた笑っていたと思う。

そして、ここにいるのが恥ずかしいかのように足早に歩き出すのだった。


僕は歩き出せなかった。


彼女は数十メートル先に行ってから振り返り、僕が来ていないことを確認すると

「は〜や〜く〜」

と、心底だるそうにそれでいてうれしそうに言った。


そしてまた歩き出した。

僕は彼女がまた前を見て歩き出したのを確認してから、ようやく歩き出した。


少しだけ、ほんの少しだけ、こっそり空を見た。


綺麗だった。


景色がにじんで見えた。







もう少し書こうかと思ったけど、やめます。


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変な偏見は捨てて、歌詞を聴いてほしい。